第三回 アリストテレス③理想と現実(1)

第三回 アリストテレス③理想と現実(1)

🐂「どうモ~、こんにちは。分かりづらいブログをわかりやすく解説する試みです。それでは始めて行きましょう」

さて、前回まで『幸福』というとっつきやすいテーマで哲学に入っていきましたが、そろそろより哲学らしいテーマを取り上げて行きたいと思います。

そして、始めに言ってしまいますが、今回かなり難しいです。なるべくわかりやすく平易に書いたつもりですが、それでもやっぱり難しいです。なので、無理ない程度にお付き合いいただければ幸いです。

また、今回の解説は、山口裕之先生の著作である『語源から哲学がわかる事典』を参考にさせていただきましたことを、先にお伝えさせてください。

 

そういうわけで、今回はいきなり名言から入ります。

 

「私はプラトンを愛する。しかしそれ以上に、私は真理を愛する」

 

これは『ニコマコス倫理学』の、イデア論を批判する項の最初に出てくる言葉です。ここからプラトンの矛盾点を批判していくことになります。なんと23カ所もおかしな点を列挙してそれぞれ掘り下げて批判しました。徹底していますね。まぁ、中にはよくよく見たら言いがかりに近い批判もありますが。そのうちの一つが以前紹介した、

「イデア界がある事、証明できませんよね?」

でした。そのものの本質がイデア界にあるってことは、いまここに『ある』ものはニセモノなのか?という話になってしまいますし、目の前に『ある』ものはニセモノで本物はイデア界にあるとは具体的にどういうことなのか、よく分かりません。

 

そのものの本質、そのものをそのものたらしめる要素は、今目の前に『ある』そのものの中にないとおかしいだろ、とアリストテレスはまず考えました。さらに、

 

「プラトン先生はイデアを『分かち持っている』と言っているが、どういう意味か分からない」

 

という批判もしました。これについて説明したいと思います。

 

1.イデアとは「あり方」である

プラトンは、パルメニデスの

 

「あるものはある、ないものはない」

 

に影響を受けました。この言葉を真理だと、プラトンは思ったんですね。だからプラトンは、目の前にあるものに対して、パルメニデスの理屈を適応させようとします。さらにパルメニデスは、

 

「『ある』ものはひとつしかなく、『ある』ものは変化しない」

 

と主張したため、プラトンはこれを受け、

 

「つまり、今目の前のものは、本当はここには『ない』。どこか別の場所に『ある』」

 

何言ってんのこの人?と思いたくなる気持ちはヤマヤマですが、パルメニデスの言うことに従うなら、そのように考えないとつじつまが合わないんですね。これはプラトン自身が目の前の現実に捕らわれることを毛嫌いした事も関わっていると思われます。

プラトンが尊敬していた師匠のソクラテスは不当な罪をでっち上げられて死刑判決を受けました。初めは政治家志望だったプラトンは「こんな事になったのは目先のことしか見ない連中が政治をやっているからだ!」と強い憤りを感じ、哲学を研究しながら目に見えない大切なことについて思索を重ねました。さらに、それを国家論に落とし込んでいくという大事業を、プラトンはライフワークにする事になります。

例えば、私達人間は今この場に『あり』ますが、やがて時間が経つと年を取り、いずれ死にます。つまり消滅する、『なく』なるわけです。やがて消滅するものは、そこに『ある』ように見えているだけで本当はそこには『ない』んです。

そう考えると、この世界のありとあらゆるものが、「本当はそこには『ない』」ことになります。

 

では、どこにあるのか?プラトンはこのように考えます。

「我々には認識できない一なる不変な『ある』ものが、様々な『○○な』ものに変化した。その『○○な』ものの影が、我々の世界にあるものだ」

『ある』という特徴は、様々な形(『あり』方)に変化します。『大きい』もの、『綺麗な』もの、『イヌである』もの、『人である』もの・・・、それぞれの『○○な』もののたくさんの影によって、私達が生きているこの世界が成り立っている、と考えました。このようにかくと、哲学とは言うものの、大分宗教じみた感じがしますね。

この『ある』という特徴が様々に姿を変えた『○○な』もののことをイデア、そして大本である『ある』もの善のイデアこれらのイデアがある世界を、我々がある現象界に対して、イデア界と呼びました。

教科書ではイデアはそのものの理想の形、と解釈されていますが、より厳密に言うと、そのものの『あり方』の理想の形、と言うことです。

 

🐂「はい、一旦ここで切ります。前回までの内容を見返してみて、毎回毎回少し長すぎると思いましたので、このような形を取らせていただこうと思いました。この後ここまで説明した事に対する掘り下げを行いますので、もしよろしければ引き続きご覧下さい」

 

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